【組織変革事例】社員の孤立・疲弊に、本気で向き合うことを決めた経営者のコミットメント ―社会保険労務士法人 労務管理佐藤事務所―

<目次>

1.事例概要

2.事例インタビュー

3.組織変革成功のキーポイント

1.事例概要


都内で最も歴史のある社労士事務所のひとつである佐藤事務所は、経営者の交代を受けて新たな経営者の元で再出発した。しかし目の前には大きく2つの課題があった。ひとつは社員が目の前の仕事でいっぱいいっぱいで孤立し疲弊しているという課題。また、これまでのトップダウン型経営の影響により、本音で話す文化がなく、社員が問題状況に対して前向きに取り組むことできないという課題。代表の安藤氏は、これらの課題に本気で向き合うことを決めた。​



【プロジェクト概要】期間:6ヶ月


●組織変革コンサルティング

組織アセスメントにより、組織の現状をインタビュー・アンケートで可視化。経営者+組織担当と共に、現状把握にもとづいた変革のゴールを設定し、変革プロセスを推進。


●システムコーチング

組織と関係性のためのシステム・コーチング®:ORSC(Organization&Relationship Systems Coaching)という組織向けのコーチング手法を用い、社員10名を対象に、本音の対話を通じて、組織内の心理的安全性の醸成、対話を通じた組織全体視点の獲得によるリーダーシップ向上。


2.事例インタビュー


社会保険労務士法人 労務管理佐藤事務所 代表 安藤貴裕 様

インタビューアー:Co-Evolution株式会社 代表 末広信太郎




ー 元々組織にたいしてどのような課題感をお持ちだったのでしょうか?


自分は当社の三代目の経営者です。二代目は自分の親で、会長としてまだ会社にいる状況の中で、経営者として自分の方向性を打ち出そうとしてきました。二代目までは、典型的なワンマン型のオーナー企業でした。トップダウン型の組織風土で、社員が本音で話せる心理的安全性がない環境でした。社員が孤立して仕事しており助け合いが少なく、業務負荷が高く、社員が疲弊している状況がありました。主体的な提案なども出てきにくい風土でした。


これらを変えたい思いはありつつも、自分と会長がお互いを受け入れられずに衝突していました。そのため、社員は代表の自分か、会長か、どちらと話せばよいのか分からない状況になっていました。


親子という難しさもありますが、相手を変えることはできない、自分を変えないといけないとは思っていました。しかし、自分だけで自分を変えるのも時間がかかる。なので、第三者の力を借りて何とかしたいと思ったのがCo-Evolutionさんに組織変革の支援をお願いしたきっかけです。第三者が入らずに変われる組織もあるのかもしれませんが、今の組織の状況をあえて見える化して向き合うためには、第三者の力を借りる必要性を感じていました。


ー 変革に踏み込むのは勇気がいる決断だったと思います。なぜ、組織変革に踏み込もうと思われたのですか?


原動力は何かというと、それは「変えたい」という気持ちです。変革のご支援をいただいても本当に変わるかの確信はありませんでした。だって、体験したこともないですし。でも、社員が大変な状況にいることは見えていました。それをなんとかしたいという気持ちがありました。その気持ちが、未知に踏み込む原動力になりました。


ー 組織変革に踏み込んだ結果、どのような変化が組織にありましたか?


社員の表情が良くなりました。疲弊感が解消され、組織全体に余裕が生まれました。大変だと言っていたメンバーも余裕が出て、今はイキイキしています。休みも取れるようになり、残業もなくなりました。


組織の中で、お互いへの思いやりが生まれています。気になったことを率先してやるような助け合いが出てきています。


社員が自分たちで考えて新しい提案が出てくるようになりました。新しいことを考えたり、新しい事業の話をできる環境の土台ができつつあります。安心感があるし、ワクワクがあります。将来について色々考えながらやるのが本当に楽しいと感じています。


ビジョンを具体的に話するようになりました。変革のプロセスの中で、将来のことをより考えるようになりました。社員を、方向舵を失った船に乗らせるわけにはいきません。ビジョンについて、より具体的にしていく思考が動き始めました。人事の方々が会社で話せないようなことでも相談に来れるようなカフェのような会社、というビジョンが生まれてきました。会社のビジョンが明確になり、会社の中で共有されるようになったことで、みんな「本当にできるの?」という気持ちもありつつも、未来に向かう明るい雰囲気があります。


相互理解のプロセスを通じて自分と会長もお互いを受け入れ合う関係が生まれました。今は、会長の関与も減り、代表の私中心に組織が動いています。


ー 変化のキーポイントは何だったのでしょうか?


ひとつ目は、組織の現状を、アンケートや対面のインタビューを通じて、数字では分からない生の本音を可視化してもらったことは大きかったと思います。それにより、本当の課題が明確になりました。何に取り組めばよいのかが明確になりました。


ふたつ目は、文字情報だけではなく、社員のリアルな感情にふれる機会をもらったことです。通常、コンサルティングは解決策を示すイメージですが、Co-Evolutionさんはそれをせず、私たちに「皆さんどう思われますか?」と投げかけて話をしていく。個人が何を感じているか、お互いが相手のことをどう感じるか、それを知っていく積み重ねのプロセスでした。


社員の本音が、言葉だけではなく彼らが立つ位置として体で表現されたり、涙を流すシーンに触れたり、嘘偽りない本音に触れた時、「どうにかしなきゃいけない」という気持ちが私の中に生まれました。本音の声が、体や感情で表現されることに触れて、それが私の体に入ってきました。人の表情、感情ってどんなにテクノロジーが進化しても、紙の文字よりも、訴えてくるものが強いと思います。それに触れたことが一番だと思います。


社員が疲弊している状況を変えるには、経験者を採用していく必要があると分かりました。それは、本当はどう困っているのか、それを解決するにはどういう人が必要なのかということを、対話を通じて拾えるようになったことで可能になりました。人の感情が出る部分って、一番解決したい問題なんだと思います。社員の感情を確認できる機会をもらったことで、優先順位が分かるようになりました。なので、私が取る対策がすごくヒットするようになりました。


採用時にもビジョンを伝えるようになったことで、以前よりも経験者を採用できるようになりました。以前は、未経験者を採用して、その教育のために既存社員の業務負荷が集中するということが起きていました。今は、経験者を採用できるようになったことで既存の社員の業務負荷を減らすことができるようになりました。


ー 組織を変えたいと感じているリーダー達に一言


経営者、組織のリーダーは、本質的なこと、社員が本当に何を思っているのかを知る必要があると思います。それを知った上でどうするかは本人次第ですが、まずは本当のことに向き合う必要があると思います。それがないと、上っ面だけとらえて、本質的ではないことをやってしまうことになります。人はどうしても自分が正しいという気持ちを持ってしまいがちです。それを超えて本質的なことをするためには、社員の生身の感情に触れて、それを心で感じる機会を持ってほしいと思います。社員への想いがある経営者、リーダーには、是非これを体験してもらいたいです。



3.組織変革成功のキーポイント


Co-Evolution株式会社 代表 末広信太郎


佐藤事務所の組織変革の成功は、事業継承や経営者の交代後の組織風土改革が難航している企業への希望となり得る事例です。また、市場環境の変化がますます激しくなる中で、トップダウン型の上意下達型組織風土から、社員が自律的に助け合い、主体的に動く組織へと進化したい組織にとっても、学ぶべきことが多い事例です。


ここからは、佐藤事務所における組織変革がなぜ成功したのか、その成功要因を整理したいと思います。


佐藤事務所の変革の成功要因として、以下の5つが挙げられます。


<組織変革の成功要因>

1.自らの変化をいとわないトップの姿勢

2.組織の現実・真の課題に向き合う勇気

3.他者の感情にふれる体験

4.つながりからのアクション

5.真の課題に取り組んだ上でのビジョンの共有


以下、一つひとつ見ていきたいと思います。


1.自らの変化をいとわないトップの姿勢


組織の現状は組織のメンバー全員によって創られています。しがって、組織の変革においてはメンバー全員が変わる必要があります。そしてそれは組織のトップも例外ではありません。むしろ、組織への影響の大きさという意味ではトップが一番大きいことを考えると、変革に踏み込むことは、トップ自らが一番変わらなければいけないということを意味します。


一般的にトップは組織の中でも最も視座が高く、また組織内のランクの高さにより社員からネガティブなフィードバックを受けにくい環境にいます。そのため、自分自身を変える必要性に気づきにくいことがあります。しかし、安藤氏は、変わらなければいけないのは自分だいうことを自覚していました。その自覚が、変革に踏み込むことを可能にしました。組織の進化は、その一歩から始まりました。


2.組織の現実・真の課題に向き合う勇気


組織の現実は、実は明らかではありません。現実は人の数だけあり、同調圧力が強い日本の組織において、本音が完全に表現されることはないからです。組織の本当の現実に触れるためには、組織全員の本音が表現される必要がありますが、本音を表現することには恐れが存在します。表現することによって誰かを傷つけることになるかもしれないし、聞くことによって自分も傷つくかもしれないのです。


その恐れを超える必要があるとすれば、それは「今のままではいけない」「なんとかしたい」という危機感です。安藤氏はそれを「変えたい」という気持ち、と表現しました。今の自分の正しさよりも、組織を変えたいという想いを優先しました。第三者の助けも借りて、社員の本音が表現される機会を作りました。それにより、組織の真の課題が明らかになりました。真の課題が明らかになったことで、課題に本気で取り組む動きが始まりました。


3.他者の感情にふれる体験


企業組織では資料やレポートという文字や数字による客観的でロジカルな情報が重視されます。もちろんそれらは重要な情報なのですが、全てではありません。組織とは関係性です。そして、関係性のベースとなっているのは、「感情」です。人は、感情を通して世界を体験します。文字や数字の情報のインプットは、それだけでは本当の体験にはなりません。生身の体験を伴わない文字や数字の情報量は、とても少ないからです。実際に他者に向き合い、その表情や雰囲気、感情を五感で体験することは圧倒的な情報量の体験です。テキストメッセージと、動画以上の情報量の差があります。他者の感情を体験することを、安藤氏は「私の体に入ってきた」と表現しました。それにより、「どうにかしなきゃいけない」という気持ちが生まれ、経験者の採用に踏み切るなどの変革のアクションにつながりました。


4.つながりからのアクション


組織の真の課題が明らかになった時に、その事に本気で取り組もうという意思が安藤氏と社員同士のつながりが生まれました。第三者が作る対話の場の他に、経営者と社員で本音で課題について対話する時間が取られるようになりました。目の前のタスクをこなすためだけではなく、本質的で重要なことのために対話する時間が割かれるようになりました。トップが一人で変革を進めたのではなく、トップと社員のつながりが生まれ、そのつながりの中でアクションが生まれていきました。


変革の途上では、今まで表現されていなかった本音が表現されるようになったことで、葛藤が大きくなったように見えた場面もありました。しかし、それらは今まで麻痺して痛みすら感じていなかった部位に血が通い始めた時に痛みを感じるように、組織に血が通い始めたサインでした。安藤氏と社員の皆さまは、それらの葛藤にも共に向き合い続け、自分たちで葛藤を乗り越えていきました。


5.真の課題に取り組んだ上でのビジョンの共有


変革のプロセスの中で現実に向き合い続け、組織の課題が解消されていくなかで、安藤氏は将来についてより考えるようになりました。組織のビジョンが具体的になっていきました。ビジョンが具体的になったことで、ビジョンに共感した経験者の採用につながったり、社員の間にも未来に向かう明るい雰囲気が広がりました。


おそらく、真の課題に取り組まずにビジョンだけ示していたとしたら、同じようにはならなかったでしょう。真の課題に取り組む過程で、組織の中につながり、相互の信頼関係が生まれました。その関係性の豊かな土壌の上に、ビジョンという種が蒔かれたことで、組織にビジョンが浸透し、社員のつながりと自律性という果実が実ったのです。


最後に


佐藤事務所のみなさまの変革に伴走させていただく体験は、私達Co-Evolutionにとって、組織の進化の可能性を見せていただいた、大変貴重な体験でした。ここまで見事に課題が解消されることを目の当たりにして、やはり組織の課題の本質は、組織の関係性にあるという気づきをいただきました。佐藤事務所のみなさまのこれからのさらなる飛躍をお祈りしています。本当にありがとうございました。


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